貧血の鑑別 -3つのStepで素早く鑑別!-

 今回は医師国家試験対策(国試対策)として貧血の鑑別について知識を整理していきたいと思います。国試対策ですので、各種貧血の病態や治療法などの詳細については別の機会に記事にしていこうと考えています。貧血の鑑別問題を効率よく解き進められるような必要最低限の知識や考え方をまとめていきます。それでは、はじめていきましょう。

貧血の定義

 まずは貧血の定義からです。貧血とは、血液中の赤血球成分(Hb)が減少した状態です。WHO基準では、男性でHb 13.0 g/dL、女性や小児でHb 12.0 g/dL、高齢者でHb 11.0 g/dLとなっております。曖昧な疾患イメージよりも自分で説明できるような簡単な疾患の定義を持っておくと学習がスムーズに進みます。ぜひ覚えておきましょう。

貧血鑑別のための3Step

 次に以下に挙げた貧血鑑別のための3つのStepについて説明していきたいと思います。

Step0 患者背景(年齢、性別など)

 まず忘れてはいけないのが患者背景の確認です。これは貧血の問題に限らず、全ての分野の国家試験問題に当てはまることかもしれません。国家試験では、ほとんどがその疾患の持つ代表的な特徴で出題されますので、年齢や性別などの患者背景も非常に重要な情報です。

 例を挙げますと枚挙にいとまがないですが、患者背景だけでも鑑別を絞ることができるものとして以下のようなものが挙げられます。

・高齢男性や閉経後の高齢女性 → 悪性腫瘍(特に消化器系)の合併や造血器腫瘍

・女性で月経異常を伴うもの → 子宮筋腫や子宮内膜症などに伴う貧血

・胃の開腹術後 → VitB12欠乏による巨赤芽球性貧血

Step1 MCVの計算

 患者背景の確認を終えた後は、MCVの計算をする必要があります。実際の臨床現場では、計算をしなくても検査結果でMCVを確認できますが、国家試験ではMCVを導出しなくてはならない問題が多いため、以下の計算式を覚えましょう。

 このMCVの値から、小球性貧血(MCV < 80)正球性貧血(80 < MCV < 100)大球性貧血(100 < MCV)の3つの貧血に大別できます。以下に貧血をきたす代表的な疾患を挙げました。以下に挙げられてはいませんが、出血の急性期や溶血などで網赤血球が高度に増加している際には大球性貧血となったり、骨髄異形成症候群の早期には正球性貧血となったりと実臨床で必要となるような知識は、おそらく国家試験では出題されないでしょうから割愛いたします。

 MCV計算は、一見すると煩雑な計算を求められているように思えますが、計算式から桁数を調整して、RBC >> Ht であれば小球性貧血、RBC << Ht であれば大球性貧血と瞬時に判断することも可能です。

Step2 網赤血球数の確認

 MCVの計算の後は、網赤血球数の確認です。網赤血球とは、成熟した赤血球が造られる過程で、幼弱な赤芽球という細胞が、脱核(核が放出されること)した後の大型な細胞です。網赤血球は約1日で成熟した赤血球となるため、骨髄での赤血球産生能の指標となっています。この網赤血球数が増加している場合は出血あるいは溶血を疑います。逆に網赤血球数が低下している場合は再生不良性貧血などによる骨髄低形成を疑いますが、まずは増加している場合の出血と溶血をおさえましょう。

Step3 他の血液検査結果や画像所見など

 患者背景、MCV、網赤血球と確認した後に、他の血液検査結果や画像所見などを確認しましょう。大分疾患を絞りやすくなっていると思います。以下には、先程あげた貧血をきたす代表疾患のうち国家試験で頻出なものに限定してまとめました。造血器腫瘍を除き、鉄欠乏性貧血慢性炎症に伴う貧血溶血性貧血再生不良性貧血巨赤芽球性貧血骨髄異形成症候群の6つの疾患は特に頻出ですので、まずはこれらの疾患を中心に病態や治療法を含めて知識を整理していくと良いでしょう。

 MCVまで計算し、小球性貧血、正球性貧血、大球性貧血に大別した後は、以下にまとめたことを参考にして、それぞれでさらに詳しく鑑別を進めていきます。例えば、小球性貧血ではフェリチンの増加に有無、正球性貧血では網赤血球の増加の有無や溶血所見、大球性貧血ではMCVや手術歴などで巨赤芽球性貧血の除外、などに着目すると効率良く鑑別ができると思います。また、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群は診断に骨髄検査が必要になってきますので、問題文の最後にある画像所見(骨髄像)も鑑別のための重要なヒントとなります。

まとめ

 以上、国家試験に出題される貧血の鑑別問題を効率良く解くための知識をまとめていきました。今回の記事を参考に、ぜひ少しでも貧血の鑑別のついての苦手意識をなくしていただけましたら幸いです。最後までお読みになっていただき、ありがとうございました。

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