Oncology emergency -腫瘍随伴症候群(パラネオ)-

 Oncology emergency (がん診療において緊急な対応を要される状態)のうちの1つに傍腫瘍性症候群(paraneoplastic syndromes; 以下パラネオ)があります。今回は実際に経験したパラネオ、特にパラネオによる神経症状について学んだことを中心に簡単にまとめていきたいと思います。

パラネオとは

 小細胞肺がん(SCLC)、乳がん、尿路性器腫瘍、血液腫瘍などの多くのがんは、内分泌系、神経系、皮膚系、リウマチ系、血液系などの様々な臓器に2次的な影響を与えることが知られています。これらの症状を腫瘍随伴症候群(パラネオ)といいます。試験によく出題されて有名なものとしては、胸腺腫による重症筋無力症、卵巣奇形種による脳炎、肺小細胞による低Na血症(SIADH)などです。治療としては原疾患である悪性腫瘍に治療がfirstなのですが、免疫介在性(自己抗体が関与)の場合はステロイドやIVIg、血漿交換などで加療します。

PNSについて

 パラネオの中でも、がんに対して特使的な自己抗体が産生されて多彩な神経症状をきたすものを傍腫瘍性神経症候群(paraneoplasitic neurological syndromed; PNS)といいます。PNSは約300のがんのうち1つのがんで発症すると報告されており、SCLC、乳がん、泌尿器腫瘍で起こりやすいと言われています。一般的な症状は脳炎、小脳変性症、脳脊髄炎などですが、免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)の副作用である免疫関連有害事象(irAE)の諸症状と類似しているため、ICIs治療下ではPNSとirAEの早期診断や対処が困難となる場合が少なくありません。

 神経内科の先生であれば海外の施設に血液検体を郵送することでPNS特異的自己抗体を検出してもらうことが多いのですが、高価な検査であり、そうでない限りは臨床症状や画像所見などで総合的に判断することがほとんどだと思います。

 PNSの治療としては、原疾患の治療に加えて、免疫介在性ですのでステロイドやIVIg、血漿交換などを実施します。これらの治療に関して、ベストな治療法のコンセンサスが得られていませんので、既報告や神経内科の先生方のご意見に沿って治療方針を決定していくことがベターだと思います。

 発展的な事項としましては、画像所見で発見できないほど早期な悪性腫瘍でもPNSをきたし得ること、PNSでも自己抗体が出現しないパターン(セロネガティヴPNS)があることなども報告されており、興味がある方は文献を探してみてください。

以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。また適宜アップデートいたします。

<参考文献>
・ Pelosof LC, Gerber DE. Paraneoplastic syndromes: an approach to diagnosis and treatment. Mayo Clin Proc. 2010;85(9):838-54.
・Leypoldt F, Wandinger KP. Paraneoplastic neurological syndromes. Clin Exp Immunol. 2014;175(3):336-48.
・Vogrig A, Gigli GL, et al. Epidemiology of paraneoplastic neurological syndromes: a population-based study. J Neurol. 2020;267(1):26-35.
・Graus F, Dalmau J. Paraneoplastic neurological syndromes in the era of immune-checkpoint inhibitors. Nat Rev Clin Oncol16(9):535-548, 2019. 

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